三年後の稽古

好きな名言を紹介します

【岸田國士】“ひとりでは何もできぬ。しかし、まず誰かが始めなければならぬ”【名言】

本日は【ひとりでは何もできぬ。しかし、まず誰かが始めなければならぬby岸田國士でございます。

 

岸田國士は戦前戦後を通して日本に新劇を根付かせた劇作家です。演劇以外にも小説、評論、翻訳など幅広く日本の文芸界に貢献した人物です。

 

かつて歌舞伎を旧劇と呼び、近代小説が描いたような、心理的な細やかな動きを表現することを目指したのを新劇と呼びました。当時西洋から来た新しい演劇は、日本人にとって大きな衝撃でした。

 

岸田國士は西洋の演劇の形を日本に根付かせ、さらにそこから自分たちで新しい日本の演劇を書いていくことに尽力しました。

 

岸田國士は「最初の人間の一人」として、パイオニア精神を持って新劇という道を切り開いてきました。ですが彼は日本の演劇界に一石を投じただけでなく、日本の文化にとって必要なことと信じ、演劇と文化をつなぎ合わせるという壮大な仕事を、壮大な志を持って牽引してきたのです。

 

自分がその道を切り開き、同士を集め、演劇、ひいては日本の文化のあり方を変える大きなうねりを起こしました。始めるものがいれば、同じ志を持つ者たちがついてきて、その流れが引き継がれていくのです。

 

よく例に挙がりますが、現在私たちが安全に美味しくフグを食べられるまでにいったいどれだけの殉教者がいたのか、今日キノコが普通に食用となっている背景にはどれほどの毒キノコ往生者がいたのか。

 

いま当然のようにあるものは、最初からあったわけではなく、誰かが苦労し、時には命を懸けて発明、発見したものなのです。

 

様々な情報がすぐに手に入る時代です。完全な開拓者はどの分野でも難しいですが、誰かがやっていることを突き詰めていくだけでも、別の切り口があることもあります。

 

その切り口を後進がついてこれるような道にしていくことも、またひとつの開拓者なのではないでしょうか。

 

岸田國士

1980~1954年。劇作家、小説家、翻訳家。東京帝国大学フランス文学を学び、パリに留学。ジャック・コポーが主宰する小劇場ヴィユ・コロンビエ座で演劇を学ぶ。帰国後、明治大学教授となり、その後文学座を創設。演劇と文学の立体化を目指し結成した「雲の会」には、三島由紀夫小林秀雄らも参加。女優岸田今日子の父でもある。